FC2ブログ

愛を識る刻

好きの定義、とは一体どのようなことを指すのだろうか。もっともそんなことは人によることであるから、明確に定義できるものではないとは分かっているけれど、僕は何故だかそんなことに興味を持ってしまうのだ。

例えば僕は『その人がいないと寂しい』とか『その人が悲しいと自分も悲しい』とかが好きということなのだろうな、と漠然に考えてはいるけれど、それが全てという訳ではないし、何故?と問われても「なんとなく…」と曖昧なことしか答えられない。だけど僕にとっては、それが僕が人を好きと思う定義なのだと確信している。というよりも、それ以外に人を好きになる方法を知らないだけなのだけど。

もちろん、僕の考えを否定する人がいることは知っている。常軌を逸した愛し方も確かに存在していることは、歴史が証明した通りだ。我々人類は何十億とも存在しており、尚且つ個々人が『豊かな想像力』を有している。生まれた時代が違う、場所が違う、環境が違う、そして、遺伝子が違う。そんな中にあってたった一つでも同じ考えが存在しているということは、天文学的な確率でありえないのだ。

ともあれ、そんな人の数だけ存在する愛し方を、たった僅かばかりしか知らなかった僕は、時折、戸惑うような愛を受けることがあった。

「わたしのこと、好き?」

人類有史、男と女のつがいの間で聞かれなかったことがないであろうセリフだ。こいつはかつて、僕が愛した女性も吐いた言の葉である。

「あぁ、もちろん好きだよ」

様式美のようなそのやりとりに、僕は何故だか心が温かくなるのを感じた。好意を向ける相手に好意をぶつけるという行為は、どうしてこんなにも嬉しくなるのだろう。僕らはつがいな訳なのだから、好きかだなんて質問は、相手から好きという言葉を聞きたいから言うだけの、いわば確認行事なのだ。彼女は好きと言われて嬉しくなる。僕は好きと伝えて嬉しくなる。約束された幸せが、そこには確かに存在した。

「じゃあ、わたしのおしっこ飲んでよ」

突然になるが、これもかつて僕が愛した女性の口から紡がれた言葉だ。

君が好きかと聞いたから、僕は好きだと答えた。それはとても当たり前のことなのだけど、そんな当たり前のことが当たり前であることが、一体どれだけ幸せなことなのか、果たして君は知っているのだろうか。君は好きと聞いた。僕は好きと言った。そこには、確かに愛があった。それこそが愛なのだと、僕は確かに知っていた。じゃあ、その先は?愛を確かめ合った、その次は…?

「じゃあおしっこ飲んでよ」

あいや待たれい!!一体何が「じゃあ」なんだ?!イントロから始まるクライマックス。そいつを間近で聞いた時、僕は言葉と思考を失う。愛とは何か。そんな面倒なことを考える生き物が人間以外に存在するのだろうか。何故人間はそんなことを考えるのか。それは人間が『考えることが出来る生き物』だからだ。そこにあって、思考と言葉を失った僕は、一体何か。

「な、なんで…?」

なんで?そう言わずにはいられなかった。いや、そうとしか言えなかった。だってそうだろ。この世に生を受けて四半世紀。その中で一度だって『おしっこを飲みましょう』なんて教えてくれた人はいなかった。むしろおしっこは飲んじゃダメだと教えられたんだ。

「な、なんでおしっこを飲むの…?」

『分からない事があったら、ちゃんと聞きなさい』幼い頃にお母さんが教えてくれた言葉を思い出す。分からないことを分からないままにしてはいけませんよ。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。なんですからね。優しく微笑むお母さんの顔。そこには確かに、愛があった。お母さん、元気ですか。僕は元気です。そっちはどうですか?お母さん。僕は、おしっこを、飲まされそうです。

「だって好きなんでしょ?じゃあ飲んでよ」

人の愛し方。そいつをたった僅かばかりしか知らなかった僕は、酷く狭い世界にいた。異なる教義は相容れない。おしっこは飲んではいけない。好きな人のおしっこは飲まなければならない。脳裏を走るおしっこパラドックス。

「い、いやだ…」

何が正義で何が悪なのか。それは誰にも分からない。誰かが言っていた。『正義の反対は悪なんかじゃない。正義の反対は、また別の正義なんだ』確かにそうなのかもしれない。物事は観測する立ち位置で容易に反転するものだ。人の愛し方は一つではなく、人の数だけ存在する。あなたは正しい。僕も正しい。みんな正しいんだ。

「なんで飲んでくれないの…?」

悲しそうに言う彼女。なんで…?それは奇しくも、先程僕が発した言葉と同じ言の葉であった。確かに、おしっこを飲んではいけない理由を果たして僕は考えたことがあっただろうか…何故人はおしっこを飲んではいけないのかを、僕はちゃんと考えたことがあったか?おしっこを、あいつのことをちゃんと見てあげたことがあっただろうか。いや…認めよう。僕は今まで何故おしっこを飲んではダメなのかなんて、考えたこともなかった…いや、だってそうだろ?!おしっこは飲み物ではないし、僕は便器でもないんだ。


月日は流れ、恋が思い出に変わる頃、僕はふと彼女のことを思い出す。そして彼女を偲び、思う。僕はちゃんと彼女のことを愛せていたのかな…と。結局僕は最後まで彼女のおしっこを飲むことはなかった。僕は彼女を愛していた。愛していた、はずだ。今はもうそうではないけれど、愛していたんだ。と、思う反面、おしっこを飲まないで愛していたなんて言ってもいいのだろうか。とも、思う。僕が飲尿を断った時、彼女は僕から愛されてないと思ったのかもしれない。彼女にとってはおしっこを飲むということが愛の形だったのかもしれない。だけど、僕にはもうそれを知る術はない。

ただ、僕がおしっこを飲まないと言った時の彼女の顔は、とても寂しそうで、思わず僕も寂しくなった。寂しくなったんだ。それが愛だと、僕は思う。
スポンサーサイト



忘年会

4年程前のこの季節、忘年会と称し貰ったばかりの給料を手に握りしめ博多から中洲へと徒歩で向かった。気分は高揚し上がったテンションのやり場をおっパブに定め、途中何度も走っては息切れしたことを覚えている。中洲に着くと街全体がネオンライトで輝いており、桃源郷に迷い込んだのかと目を疑った。


かくして僕は快楽の園へ足を踏み入れた訳なのだけど、まだ右も左も分からぬまるでチャイルドのような僕は、道で声を掛けている深海でしか生息できないような面を引っ下げたお兄さんにだって救いを求めてしまう。瞬時に光り出す瞳、その眼は正に獲物を見つけた肉食獣のそれ。僕はそのまま深海肉食獣に手を引かれ夜の闇に溶け込んでいった。


薄暗い店内に導かれその道のプロフェッショナルを待つ。気分はすでに最高潮。速まる鼓動、息切れする動悸、反り立つちんぽ。準備は万端だ。どのタイミングでどのような角度で来たって華麗に揉みしだいちゃうぜ!今の僕なら何でも出来る。ややもすれば宇宙飛行士にだってなれるかも!その時の僕は、確かにそう思ったんだ。


「○○美ちゃん5番テーブルに付いて!」キタかッ!ざわめく店内で耳を澄ますこと5分。僕のテーブルは5番。とうとうキタね…「初めまして~○○美です♪」脳裏に響くピンク色のボイス、この声が僕の鼓膜を優しく揺らすだけでイっちゃうこともやぶさかではないぜ!よっしゃ!そうと決まれば善は急げだ!御託はいい!早く揉ませろ!はやる気持ちを抑え込む。まだだ、まだ耐えるんだ。気分はもう最終巻での夜神某のそれ。あくまでも冷静に、そして紳士的に、印象が良ければ仕事終わりに誘われちゃうことだってあるかもしれない。もしもそうであるならば、彼女が僕を求めてくるのであるならば、この身を全て彼女に委ねることもやぶさかではない。


「お隣いいですか~?」ふいに耳元に響くラブ☆ボイス。生きていて良かった。僕は心から神に感謝した。アーメン。しかしここにきてハッと気付く。声は100点中120満点だが、顔は?顔面偏差値はいくらくらいであろうか?あまりの美声とマシマロみたいなおっぱいに気を取られ、まだ女の子の顔面協奏曲にアンサーソングを奏でていないことを思い出した。


薄暗い店内で目を凝らし、今一度顔を覗き込む。風貌はギャル風、目はとろりと垂れ下がっている。股の方は緩そうだ。おっぱいの大きさは…分からん!分からんがでかい!よし!もういい!合格!


すでに緊張をほぐそうとお酒を鯨飲していた僕の中の緊張の二文字は既にアルコールに浸かっていた。今思えばそれがいけなかった。隣に座るおっぱいが叫ぶ「すごーい!お酒強いんですね!」その言葉に僕は気分が良くなるのを実感した。


これまで生きてきてこんなに女の子に褒められたことがあったであろうか。いや、否!断じて否!しかし褒められるというのは存外に気持ちいい。そうか、僕は褒めると伸びるタイプだったのか。


今なら分かる。それはきっとお客さんを気持ちよくさせるプロの気遣い(技)だったのだろうと、しかしまだ若かりし僕にそれを見破る術はなかった。そして多分今もない。その後調子に乗った僕は乳も我も忘れひたすら酒を浴び続けた。


目が覚めると僕は一人、天神は警固公園のトイレの中で便器を抱えて座っていた。昨日貰った筈の給料と、おっぱいを揉んだ記憶は、塵も残さずなくなっていた。

いつかのメリークリスマス

何年か前のクリスマス、僕は先輩の家で鍋をつついていた。

講義が終わり、大学構内のあちこちでクリスマスパーティーのお誘いが飛び交う中で、まるで川の水が流れるかの如く僕は誰にも声をかけられず校門をするすると抜け出た。

校門を出た後でも、男3人女3人の組み合わせのクリスマスパーティだか乱交パーティだかよく分からないが、おそらくそんな感じの催しをする人々が、浮き足を立てながら歩いていた。その日は快晴であったのにも関わらず頬に水が流れたことは、個人的大学七不思議として僕の思い出に鎮座ましましている。

さすがにクリスマスの夜に一人で過ごすことは精神的に大打撃を与えかねないと思った僕は、おもむろに携帯を取り出した。かじかむ手にはぁ~と息を吐きながら食い入るようにアドレス帳を眺める。

アドレス帳の中にはアドレスを交換してから一度も連絡を取ったことのない男たちと、もう思い出せない名前の男たちだけで埋め尽くされており、今度こそ間違いなく僕の周りを雨が降り出した。台風かと思った。

そんな悲しみが僕をサンドバックのようにボコボコと殴っている時、ポケットにしまった携帯電話が鳴りだした。

「すわ、クリスマスセックスのお誘いか?」

興奮しながら電話に出ると、バイト先が同じオタクの先輩からの電話だった。先程まであんなにも妖艶に光り輝いていたように見えた携帯電話は、よくよく見ると傷だらけでなんかすげー汚くかった。なんか陰毛も挟まってた。

「おう!今日ひまか?」

「まあ、彼女もいないし、予定もないですね」

「じゃあ俺ん家集合な!」

詳しい内容は聞かなかったが、おそらくバイト先のメンバーを集めてクリスマスパーティでもするのだろう。

うちのバイト先に女の子はいなかったから、男だけでクリスマスパーティか…と肩を落としたが一人で過ごすよりは幾分かマシだ。今日は飲みまくって酔いに任せてクリスマスを乗り切ろう。そんなことを考えながら先輩の家まで歩き出した。

先輩の家のドアを開けると、奥の部屋から鍋のスメルと生暖かい風が漂ってきた。おいおい、もう始めてやがんのかよ。と思い靴を脱ぎ玄関に足をかけた、ところで気が付いた。

「靴が無い…」

玄関ホールにはいつも先輩が履いているナイキの靴が一つと、僕が脱いだブーツの片割れが申し訳なさそうに佇んでいるだけだった。

「おう、まあ中に入れよ」

僕が来たことに気付いた先輩が出迎えに来て、僕は案内されるがままに部屋へ入って行った。何回も来ている筈の先輩の家の廊下が、こんなにも長く、こんなにも静かだったこと、僕は初めて知った。

部屋に入るとテーブルの上に小さな鍋が申し訳なさそうに佇んでいた。そして、テーブルの脇にはしわしわの座布団がふたつ、静かに転がっていた。

「みんな、彼女と過ごすんだってさ…」

「そ、そうですか…」

僕らは2人、静かにビールを空け、静かに鍋をつついた。時折、隣の部屋から聞こえる若い男女たちの笑い声が、2人だけの部屋に嫌に大きく響いた。なんなんだろうクリスマスって。

そうして何事もなく無事に僕と先輩の二人だけのクリスマスは幕を落とし、健全なカップルの如く僕は日付が変わる前に家に帰る運びとなった。

「あー、ちょっと待って、ほら、これクリスマスプレゼント」

さすがに企画した側としては2人きりのクリスマスパーティなんて責任を感じてしまったみたいで、先輩はコンビニの袋の中に無造作に入れられたプレゼントを渡してきた。そりゃそうだ。責任が重すぎてフローリングぶち抜かねえかなコイツ。

中身は家に帰ってから開けろということだったので、僕らは「メリークリスマス」と言い合い、解散した。

家に帰って開けた袋の中には、先輩が使った後のエロゲが入っていた。なんか陰毛も挟まってた。

僕は静かに泣いた。そしてオナニーをして、寝た。





メリークリスマス

まるで花火のよう。

恋は花火のようだ、と誰かが言った。

暗い夜空の中で光り輝くのはほんの一瞬の間だけ、散ってしまえば何も残らずまた夜空が広がるだけ、前と同じ夜空なのに何故か物足りなくなって、また花火を探してしまうのだ。


「ずっと好きでした。僕と付き合って下さい。」

学生風の赴きではない雰囲気を醸し出した小洒落たバーの一席で、青年の声が静かに、そして力強く響いた。


隠すつもりも隠れるつもりも無いので先に言ってしまうが、凛とした顔立ち、誰からも好意を持たれそうな愛嬌のある笑顔、黙っていても溢れだす優しさのオーラを出すこの青年は、ご明察の通り僕である。

そして僕は男と女の桃色エトセトラに興味は無いし、書くつもりも無い。僕の好きな話は他人の失恋話。つまるところこれは僕の告白から失恋するまでの話を赤裸々に綴ったエンターテイメントを提供しようという試みなのだ。誰もが赤面すること請け合いのハッピーエンドの話を期待するなら、書店のおススメコーナーに並んである本の一冊を目を閉じながらでも一冊手に取るべきだ。少なくともこの話よりは恋に関する知識を増やせると思う。


僕の言葉を聞いた女性は、ころころと猫のように笑い始めた。

「うん、知ってる。」

笑いながら彼女は答えた。ころころと笑いながら答えたせいか、言葉は途切れ途切れになっていた。

彼女と僕とは大学1年からの付き合いになる。サークルが同じだったのだ。

ことの始まりは些細で、少女マンガによくありそうな展開をコピーアンドペーストしたような始まりであった。このような自分を見失うような行為は、孤高人としての誇りを持っている現在の僕としては恥ずべき行為であるのだけど、当時の僕はヒビだらけのガラスのハートという思わずハンマーで叩き割りたくなるような物をこれ見よがしに振りかざしており、そんな僕が恋に落ちてしまうのも無理からぬ話で、そのまま地獄にも落ちてしまえば良かったと思う。

簡単に説明すると、恋人と別れた後相談に乗ってくれた子を好きになった。

文章にするのも恥ずかしい、恥ずべき愚行である。今この文章を書くだけでも20分かかった。顔も赤い。死んでしまえばいい。当時の僕は頭の中にヒッピーでも沸いていたのか。毎日が愛のお祭りか。



「あきが彼氏とかはないかな~」



猫のように、ころころと笑いながら、彼女は言った。

僕が告白する、だいぶ前のことだった。

彼女はまだ笑っていて、僕もつられて、笑った。笑いながら、諦めた。花火は打ち上がり、音もせず、輝きもせずに、消えていった。


今また同じように、彼女は笑っている。昔と変わらず猫のように、ころころと笑っている。


恋は花火のようだ、と誰かが言った。

暗い夜空の中で光り輝くのはほんの一瞬の間だけ、散ってしまえば何も残らずまた夜空が広がるだけ、前と同じ夜空なのに何故か物足りなくなって、また花火を探してしまうのだ。

僕の花火は、湿っていたのかもしれない。

暑さが人を駄目にする


もういくつか寝ると、夏が来るらしい。そういえばここのところ窓を開けっ放しで眠ることが多くなった気がする。服もだいぶ薄い服を着るようになったし、本も薄い本を読むことが多くなった。本は関係なかったけど。


なにはともあれ、もうすぐ太陽の自己主張がとんでもなことになる季節だ。この季節、世の人々は暑さの所為かそれはそれは大胆な気持ちになってしまうらしい。


世の人間が一番疎ましく見えるのもこの時期だ。気持ちが大きくなると言うのか、自分の行動の一切合切を夏の所為にしてしまい、普段しないようなことを平気でやってのける。はっきり言って、異常だ。おそらく僕もその異常者の一人なのかも知れないのだけど。それも分からん。


夏の季節には様々なイベントが催され、本人の意思などおかまいなしに強制連行されたりなどが、街中のあちこちで見受けられ、やり場の無い怒りを間違えて気管に飲み込んでしまった時に無理矢理笑っているような、おおよそ笑顔とはかけ離れた笑顔をしている人が多い。


まあこれは夏だけに限らず年中無休24時間体制で全国のどこかしこで起こっている。まるでコンビニだ。


僕もこのような行事に誘われることもしばしばで、どちらかというと思う存分に楽しむサイドの人間なのだけど、夏はいかん、夏だけはどうにもいかん。



大体この手のイベントというのは幹事が一人ないし二人は必ずおり、参加メンバーの管理やイベント全体の企画、進行を任されるというおおよそ悪魔の所業かと間違うレベルの拷問を強いられるのだが、なぜだか僕はいつもこの幹事という損な役回りを任されることが多い。


本当に僕の周りは阿呆ばかりだ。せっかくの一年に一度しかない夏の行事を、あろうことかこの僕に任せるとはみんな頭の中にカマドウマでも飼ってんのか!?僕にみんなの夏の思い出を任せて、楽しい思い出を作れると本気で思っているのだろうか。誰がやっても楽しくなると思っているのだろうが、僕にかかればどうにもならん。


大学生活で幹事を任された回数は数えきれないが、完遂した回数は5回くらいだと思う。その中で楽しかったことは1回か2回くらいなもんだ。宝くじでも買ってた方がよっぽど楽しい思い出になるんじゃないかこれ。(ちなみに中止になった回数は10回を超えており、主たる理由は僕が音信不通であったことと、寝坊であったこと。)



話を戻すが、こんなに多くの行事をこなしてきた僕でも夏の行事は匙を投げてしまいそうな数多くあった。3回くらいはホントに投げた。


まず、話し合い。いつ、どこで、なにをするのかをみんなで話し合う大切な会議だ。これを決めなければ何も始まらない為、みんな一生懸命に自分のしたいことをPRする。だけど夏はそうじゃない。


あまりの暑さに思考回路が溶けてしまったのかと思うほどみんなテキトーなことしか言わなくなるのだ。僕が海に行く?と聞けばうーん、と頭をふわふわさせ、山に行く?と聞けばえー、とアンガールズみたいな顔をする。じゃあ何がしたいの?と聞けばなんでもいいよ、と答える。


もうね、普段怒ることなんて全くと言っていいほど無いこの海よりも深く、空よりも高く、宇宙よりも広い心を持ったまるで弥勒菩薩、いや、聖母と言われてもなんら不思議ではないこの僕もですね、怒りに身を任せてガゼルパンチからのデンプシーロールをカマして体制を崩した所を筋肉バスターでフィニッシュをかけ、どこぞのクソミソな公衆トイレに桃色ブリーフ一枚で放置しそうになる案件ですよ。


だけどそれをやったら色々と問題がありますからね、人付き合いが大切なこの社会ほんと我慢しなくちゃいけないこともありますから、このやり場の無い怒りを、間違えて気管に飲み込んでしまった時に無理矢理笑っているような、おおよそ笑顔とはかけ離れた笑顔をしてなんとかやりすごしましたよ。


結局、なんでもいいよと言われたから、どうせだったら自分のやりたいことするか、と思い「耐久イベント!朝から夜までアルコールツアー!!!」を企画したけど、全員からのボイコットを受け泣く泣く独りでお酒だか涙だか分からない液体をずっと啜ってました。




夏はみんな我儘になるから、あんまり好きじゃない。