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その微笑みは

雪の降り出しそうなどんよりとした空を見上げ、彼女は嬉しそうに笑っていた。その笑顔は赤ん坊に向けるような微笑みで、とても優しさに満ち溢れ、その笑顔を見た時僕は僕の全てを彼女に捧げようと、心の中で静かに決意した。

彼女はそのままの笑顔で僕の方を振り向き、言葉を紡いだ。近くの線路を電車が走ったのだろう、その時耳をつんざく程の大きな音が鳴り響いていたので、彼女が何を言っていたのかはよく聞こえはしなかったが、なんとなく、ほんとになんとなくだけど、その言葉は僕にとってとても嬉しいことなんだと感じた。

それは自信だろうか、それとも傲慢なのだろうか、僕は僕と彼女が別れるなんてことは全然想像出来ないし、だからといってどんなことを口にしてもいい訳ではないのだろうけど、やはりケンカやお互いに嫌なことはあって、それを口にした時にきっと傷ついてしまうのだろうし、もしかしたら泣いてしまうかもしれない、悲しんで、嫌になって、僕の顔なんて見たくなくなるのかもしれないし、今までにも何度かそのようなことはあって、でも、それでも僕は彼女と別れるなんて想像が出来ない。これを傲慢だとか相手の気持ちを分かっていないとか言う人もいるけれど、僕はこの気持ちこそが愛なんだって思う。

彼女も同じことを考えてくれていればいいな、とは思うけど、きっとそんなことはなくて、この世に同じ人間が二人といないように同じことを考えている人間なんていなくて、だけど、だからこそ僕らは恋をし、相手のことを知りたがるのだろうとも思う。だからきっと彼女と僕は別々の考えを考えていて、でもそれは、実はとても辛いことなんじゃないか?大体の涙の理由とか喧嘩の理由はやはり相手の気持ちが分からないことが原因だ。だから本当は相手の気持ちを分からなければいけないのだろうか。

僕はグルグルと同じことを考えてしまっている。僕と彼女はどうしたらいいのだろうか。僕は今までおよそ23年間も生きてきて、何が正しいか、何が間違っているかを一通り、たぶん普通の人くらいには判断できて、まあ23歳にもなればそれが当たり前の事なのだろうけど、その中で僕の答えは恐らくしっかりと芯は通っていないのかもしれない。僕は僕なりに答えと呼べる何かを手にしたつもりでいるのだけど、それも人の意見を聞いて、見て、それらを混ぜてできたいわゆるパクリのような答えなのかもしれなくて、僕にはそれが怖いし絶対に他人に話すことなんてできない。

彼女が相手なら尚更だ。僕の今までの人生がそうだったように、もしも僕の間違った答えを聞いて、彼女が僕の言葉によって変わったりしてしまうことが怖い。僕は今、この瞬間の彼女が好きなのであってこれからの彼女を変わらず好きでいられるかと聞かれると、それはもう大好きでいられるのだろうけど、変わらなく好きでいる自信はあるのだけど、今まで以上に好きかどうかは分からない、というのが僕の本音だ。

僕は彼女が好きだ。それはもう本当に好きだ。でも、それはこれまでの彼女が好きだということであってこれからの彼女の事ではない、そりゃこれからも好きでいたいし好きでいられる自信はあるのだけど、これまでの彼女と違いこれからの彼女と僕はまだ会ったこともないのだ。想像はできるけどそれは所詮イメージトレーニングみたいなもので、イメージトレーニングをしたからといって必ず成功する訳ではないことも知っていて、でもそんな弱気でどうするんだ、好きでいられる自信がないのか?なんて自問自答とかも始まってしまうけど何回したって答えはいつも決まっていて、好きでいられる自信はあるのだけど、今以上に彼女を好きになれるかが心配であって、それはそうだろう。今いる彼女こそが僕の好きな人で、僕の愛そのもので、僕らの愛の形なのだ。今以上好きになってしまうなんて、今の僕には想像もできないとは言い切れないけど、あぁもう…

なんだかさっきから考えが上手くまとまらない。僕はいつもそうだ。彼女のことになると柄にもなく真面目なことを真面目に考え始めてしまう。僕はそんなに真面目な方ではないのだけど、彼女に対してだけは真面目に考えなくちゃいけないような気がしてならなくて、それが他ならぬ愛の証なのかもしれないとも思ったりもするけど、彼女は普段の僕が好きなのであって今の真面目な僕のことをどう思っているのだろうと怖くなったりもするのだ。

彼女も僕と同じくらい考えているのだろうか。涼しい顔をしながら、頭の中では僕の事だけを考えていてくれているのだろうか。僕らはきっと同じことは考えられないだろうけど、せめて同じくらいの量は考えていてほしいな、なんて、思ってしまうんだ。彼女いないけど。

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